中年の学習ノート

無能で臭い中年の学習帳です

【論文を読む 2】Structural Holes and Good Ideas / Ronald S. Burt (2004)

Structural Holes and Good Ideas

Ronald S. Burt, American Journal of Sociology, Vol. 110, No. 2 (September 2004), pp. 349-399

まとめ

  • 「仲介」的な立場が社会資本を産み出すメカニズムについての研究
  • ネットワーク構造的に仲介の立場にいる人(拘束度の低い人。構造的空隙) は出世やパフォーマンスが高い傾向にあり、また価値のあるアイディアも産み出すことができている

方法

  • アメリカの電機会社における 673 人のマネージャーを対象とした調査 (name generators and interpreters)
  • ネットワークグラフを作成し, 拘束度指数を計算
  • Burt の拘束度指数 (i の j に対する拘束度)

c_{ij}=(p_{ij}+ \sum_{q} p_{iq}p_{qj})^2 , \ \   for\ q\neq i,j

結果

  • 拘束度が低い人 (疎なネットワークを形成 = 複数集団の仲介的立場) は査定が高く出世が早い (拘束度指数が負の係数)
  • 拘束度が低い人は価値のあるアイディアを産む

気になる点

  • 個人の能力が交絡している可能性はないか。
  • 構造が良いアイディアをもたらすとした場合、そのことをより直接的に観測する方法はあるか
  • 全員が構造的空隙にはなれないので、個人ではなくチーム全体としてのパフォーマンスを考えた場合に、構造的空隙の評価が変化する可能性はないか

【教科書を読む 1 】ソーシャル・キャピタル 社会構造と行為の理論 / ナン・リン (2008) ③

第 3 章: 資源、ヒエラルキー、ネットワークと同類性

ネットワークの中の資源 (物質的、象徴的な財) はいかにして価値を帯びるのか

価値が付与される条件

  1. 集団内の合意や影響力により、価値観が形成される
  2. その資源を持つ個人が集団内で何らかの利益を得ることができる
  3. 一度価値観が形成されると、それを維持しようとする力が働く
形成された資源は、どのように「埋め込まれている」のか
  • 資源は人ではなく構造的な地位に付着する
  • 個人はネットワーク上の位置によって配分される資源が決定される
  • 集団内の権力や権威とは、資源を統制できるポジション
  • 資源はヒエラルキーに埋め込まれる
相互行為と同類性
  • 社会的ネットワークは、ヒエラルキー構造とは異なる、より非公式な社会構造 (要は友人関係とか)
  • 同類性: 社会的な相互行為は資源量が近しいもの同士で行われやすい。すなわち、ライフスタイルや社会経済学的特徴が類似する集団で行われやすい。
  • 異なる集団であっても構造的地位が近しいものの間で交流が行われやすい
感想

集団と資源とヒエラルキーの関係性がよく分からなかった。集団内価値の創出とヒエラルキーは必然的な関係にあるのだろうか。「価値」となった時点でそれは量的な性質を帯びるので「多少」が生じ、多いものによって「権力」ができる。一度できてしまえばそれが維持される。ざっくりいうとそういう感じかもしれないが、そのあたりの事情についてのより精緻な議論に興味がある。

【教科書を読む 1 】ソーシャル・キャピタル 社会構造と行為の理論 / ナン・リン (2008) ②

第 2 章: 社会関係資本

社会関係資本とは
  • ネットワークに属する成員同士のつながりの中に、資源が内在している。その資源。
  • 個人はその資源へアクセスし、活用しようと行為する。
社会資本はなぜ資本として機能するのか
  1. 情報: 社会的つながりから有益な情報を入手できる

  2. 影響: 仲介行為など、昇進や転職に関係する

  3. 与信: 知人関係から、その人の地位や信頼性が測れる

  4. アイデンティティ: 集団への帰属や承認により、メンタルヘルスが維持できる

個人と集団の 2 つの視点が存在する
  1. 個人が利用できる資源としての関係資本

    • 借用できる、融通してもらえるなどの関係資本
    • ネットワーク上のポジションによる競争的優位性 (バート)
  2. 集団としての関係資本

    • 集合財の維持や創出
    • 経済資本の集積としての資源を守る(ブルデュー
    • 埋め込まれた個人に特定の行動を促す (コールマン)
    • 規範や信用の創出により、構成員の幸福をあげる(パットナム)
閉鎖的ネットワークと開放ネットワーク
  • 集合財や規範は閉鎖的ネットワークを前提としている
  • 閉鎖的ネットワークのみが社会資本ではなく、ネットワークや弱い紐帯が、新しい資源の獲得に重要であるという議論もある(グラノヴェッター、バート)

【教科書を読む 1 】ソーシャル・キャピタル 社会構造と行為の理論 / ナン・リン (2008) ①

要約

第一章 資本の理論 

  • 資本とは? → 市場で利益を得ることを目的として、投資され、活用される資源

  • 社会関係資本ソーシャル・キャピタル)とは? → 資本を社会関係の中から捉え、人が埋め込めれた構造的な制約や機会を抽出する試み

  • まずは資本に関するこれまでの理論を概観

古典的理論
  • 資本は、商品の生産と交換によって生じる剰余価値の一部(マルクス)。要はピンハネの部分

  • 資本家が生産手段をコントロールしており、労働者は剰余金を得られず資本を蓄積できない

  • したがって労働者から資本家への階級移動は生じない

  • 資本主義の前提に階級の分化があると指摘

新資本理論
  • 人的資本: 労働者の中に資本(技術と能力)が内在するという考え

  • 人的資本を高めると最低限の交換価値(最低賃金)以上の給料を資本家に要求できる

  • 高技能労働者は高い給料で資本の蓄積も可能なため、資本階級への移動も可能となる

  • 資本家からみた手段・コストとしての労働ではなく、より目的的な労働観への推移

文化資本
  • 文化とは? → 支配階級の価値観を、教育を通して、社会全体の文化や価値であると誤認させること(ブルデュー

  • 勤勉とか忍耐とか、なんでやるのか分からない勉強の類とか

  • 文化資本の獲得を内面化し、その文脈にしたがって個人の能力を高めることで、人的資本を高めることができ、階級移動へ繋がる

  • 人的資本の獲得は文化資本、または教育環境などに強く依存する

  • 目的的行為と環境(構造)の相互作用の中で、獲得できる資本が変動する

  • その相互作用をより明確にしようというのが社会資本

俺の感想

子供は労働者としての価値観を内面化させられ、世に送り出される。その中で、支配階級の文化の文脈で「優秀」な者が、少しだけ給料が高くなって資本階級へ近いていく。その選別が学歴であり、文化資本をどれだけ身につけたのかを測るバロメータとして機能するが、学問(研究)を追求しすぎると、社会の文化資本とずれてくるので、博士号取得者よりも学部や院の新卒の方が好まれたりもする。 「彼ら」に気に入られて他の人よりも年収を高くするためにハイパー禁欲的な生活を自己に強いているのが現代の人々だが、文化資本を内面化しすぎると自己を喪失するので辛い。とはいえそれを軽視しすぎると全く金を稼げない。文化資本を内面化せずにゲーム的に捉えた上で自分の欲望の文脈に回収し、あくまでも欲望に身を任せて生きる豪胆さが必要なのではないかと思う今日この頃。

【論文を読む 1 】The Strength of Weak Ties / Marc Granovetter (1973)

The Strength of Weak Ties

Granovetter M, American Journal of Sociology (1973) vol: 78 (6) pp: 1360-1380

一言まとめ

社会ネットワーク研究において、非常に著名な古典論文。グーグルスカラーで引用数約 5 万件という。

人と人の関係が形成する社会ネットワークにおいて、その紐帯(つながり)の強さに注目し、相対的に希薄な関係(弱いつながり)が重要な機能を持っていることを主張。

自分なりの要約

ネットワークの性質には、密度(可能な結合のうち、実際の結合の割合)や紐帯の強さがある。
紐帯の強さは関係性の強さのことを指す。強い紐帯とは、家族や親友など、感情的に結びついていて、親密で、会う頻度も高く、経済資本のシェアが可能であるような存在。一方、弱い紐帯は仕事の同僚やそれほど会わない友人など、上記と比べた場合に希薄な関係を指す。
紐帯の強さとネットワーク密度には密接な関連があって、強い紐帯の集合はは密度が高くなる。地方のヤンキー同士が互いに全員ダチであるように、強い紐帯にある二者の友人は共通の友人になりやすいためである。一方、弱い紐帯の場合にはそのような閉構造が生じにくい、というか、そういう閉構造とならない関係こそが、弱い紐帯と定義される。
その結果、(定義上)弱い紐帯は異なるサブグループを結びつける存在と表される、というのがこの論文の主張だ。紐帯の弱さという質と、密度の低さという構造、さらにマクロレベルで見た場合は異なるサブグループ間のブリッジ、という一見異なる概念同士が実は定義の言い換えであるという指摘が巧みになされているように思える。

弱い紐帯、つまり「希薄な関係」= ブリッジは、異質な情報をもたらしやすいという独自の機能をもつ。例えば、転職などの「機会」は、弱い紐帯によってもたらされる、と本論文では主張されている。家族やヤンキー友達社会では同質的世界観(資本の資源として見た場合は相互に資本がシェアされやすいというメリットが当然あるが)のため人生の転機となるような「新情報」は得られにくいが、弱い紐帯がそのような情報をもたらしてくれるということで、これについては論文の中で何となくの実証実験も示されている(何となく n 数が少なかったり紐帯の強さの区分が恣意的に見えるけど)。
さらに弱い紐帯は、異なる価値観も伝播させるため、価値観のコンフリクトも引き起こすが、同時にそれらを統合するロジックの生成も促すとも考えられ、より大きな価値観をもつコミュニティが成立する契機をももたらす。一般に都市の人間の方が進歩的で「意識が高く」なりがちなのは弱い紐帯が多いからかもしれないのだ。

気になる点

これは 1973 年の、「概念の提示」的な論文であり、5 万件の引用の中で、様々な事例で実証されたり、反証されたり、理論自体もアップデートされたりしているであろう。これから、それを追っていく。

次に読む論文

Ronald Stuart Burt の 'Structural Holes' を読もう