論文レジュメ: Network Support and the Success of Newly Founded Businesses (1)

 最近、ソーシャル・キャピタル(人脈)と経済についての論文を、色々と読み始めている。「人脈」が個人の経済状態や会社組織にどのような影響を与えているのかという分析に、興味があるからだ。
 
 今読んでいるのは 1998 年に Small Business Economy という雑誌に掲載された Josef Bruderl という人の Network Support and the Success of Newly Founded Businesses という、ドイツで行われた研究の論文。
 この論文では、起業の成功と、人脈ネットワークからのサポートの関係が調べられている。そもそもネットワーク仮説というものがあり、「起業家は、広く多様なネットワークを有しているほど成功しやすい」という仮説だが、この論文はその仮説検証の一つとして位置付けられている。
 データは、ドイツの 1710 人のビジネス創始者に対して、 1990 年から取り続けた調査結果に基づいている。
 
 始めに、人脈や資本の豊かさを示すであろう指標(学歴、職歴、マネージメント経験など)と、身内や近い人々のネットワークから受けたサポートの程度の、相関について調べている(なおこのネットワークは「強いつながり」と「弱いつながり」に分けられ、「強いつながり」は配偶者・親・友人・親戚、といったネットワーク、「弱いつながり」はビジネスパートナー、知人、雇用者や同僚から成るネットワークである)。
 これは、ビジネス人脈や資本が豊かでないほど、ネットワークからより強くサポートを受けようとするかもしれない、という仮説(補償仮説)を検証するためだ。お金や学歴が少ないほど、家族に頼るのかもしれない。もしそうであれば、ネットワークからのサポートの強さと、起業の成功の関係が、不明瞭になったり、負の相関を示したりすることがあり得る。
 この結果は曖昧なもので、補償仮説は正しいとはいえなかった。特に、スタートアップ時の資本の量と、ネットワーク・サポートの強さは正の相関を示した。この資本とネットワークの関係については補償仮説は成立しない。お金があるような人は周囲からもサポートを受けるという、「富めるものは・・・」的な結果になっている。

 さて、それでは起業の成功(成功指標は 3 つ。3 年間事業が継続したか、さらに従業員が増加したか、売上が 10 % 以上上がったか)とネットワークサポートの関係だが、それを推定するのに当たって、bivrate probit regression という手法が使われている。このモデルには共変量として、起業の成功に影響を与えそうな因子(性別や国籍、業種、それに教育や職の長さなど)を加えている。
 これら共変量と事業成功の関係は興味深い。例えば起業者が女性の場合は、事業の生存には影響しないが、従業員数や売上の増加は男性よりも小さい。
 教育期間や仕事経験の長さは事業生存にプラスだが成長には影響しない。また、その起業内容が、すでにある事業のフォロアーだった場合は、完全に新規だった場合に比べて、成長の程度が下がる(競争相手がいるからだろう)。またスタートアップ時の資本量は生存にも成長にも正の関係がある。つまり最初にお金がある方が生存も成長もしやすい。
 現代の日本でも、このようなことを調べた研究があるのだろうか。結果を知りたい。
 
 まだ途中だが、続きは後日。